不登校・ひきこもりを生きる 高岡 健
講演会を文章に起こした感じの本です。不登校とひきこもりに悩んでいる親にお勧め。
本書は2部構成になっています。
第1部 I 一人ぼっちという大切な時間
II 登校拒否・ひきこもりを生きる
III ライフステージとしての「ひきこもり」
IV ひきこもりと若者の人権
第2部 高岡健さんへの100の質問
第1部では登校拒否、ひきこもり当事者の気持ちとその保護者の対応策を中心に展開されており、第2部では実際の登校拒否、ひきこもり当事者やそのその保護者からの質問に答える形で書かれています。
高岡健さんという方はこれまで全く知らなかったのですが、主に登校拒否のほうに興味をひかれて読みました。
高岡健さんは、『不登校』ではなく、『登校拒否』という言い方の方が好きらしいです。なぜならば、そこには拒否という意志が入っているからだそうです。
そう言われると、確かに不登校の子供というのは、自分の意志で学校へ行かないんですものね。その意志を尊重して『登校拒否』のほうが実は正確に現象を表しているのかもしれません。
そして、高岡健さんは、登校拒否、ひきこもり推進(というと語弊がありますが)派です。行きたくないとき、出たくないときは無理しなくてよい。家でゆっくり過ごしてエネルギーを溜めればよい。エネルギーが溜まれば自然と外に行きたくなるものである、との理論です。
面白いと感じたのは、登校拒否やひきこもりの状態を物理学的なエネルギーになぞらえているところです。
力学的エネルギー保存の法則、を持ち出して、登校拒否やひきこもりというのは、位置エネルギーを溜めている状態であり、決してエネルギーを無駄に使っているわけではない。運動エネルギーは低下している状態だが、位置エネルギーをどんどん溜めている状態だそうです。
そうすると、位置エネルギーが運動エネルギーになったとき、大きな力となるのです。
なるほど、と思いました。
そして、人生には、その位置エネルギーを溜める期間が大事であると言っています。
登校拒否、ひきこもりは、ともすれば「悪いこと」と思われがちですが、高岡健さんは、登校拒否、ひきこもった時期を経てこそ一人前!とまで言っています。登校拒否、ひきこもりの間に、本人は自分と向き合って色々考えているからです。
それが、豊かな人生に結びつかないはずはない。むしろ、そういった自分と向き合う時間をとれていない人間は半人前である、と。
だから、登校拒否や引きこもりはノビノビと安心してやらせてあげないと、長引いたりしてしまう。
なかなか大胆な考え方のように思えますが、本を読んでいると「なるほどな」と納得できるから不思議ですね。ちなみに、私も登校拒否は「どんどんやれ~」と思っているタイプです。(引きこもりについては深く考えたことはありませんので。。。)
学校という古臭いシステムの場所で違和感を感じ、「行きたくない!行っても無駄!」と思っての登校拒否だったり、いじめられたりしての登校拒否だったりは、どんどんするべきです。学校全体を否定するわけではありませんが、全員を同じように扱い、みんなが同じようにすることを良しとするシステムが、今後の社会の役に立つとは到底思えないわけです。
特に、いじめられたりした場合は、一刻も早く登校拒否したほうが良いです。最悪自殺、なんてことになったら、取り返しがつかないですから。
しかし、子供は「いじめられている」とは伝えてこないようですので、いじめられているという確証がなくても、子供が「休みたい」と言ったら休ませるべきだと思います。
さて、登校拒否、ひきこもり当事者の親の過ごし方についても述べられています。
子供に対して経済的な援助をすることはもちろんですが、そのほかには見守る以外はしなくて良いそうです。親は親の人生を歩めばよい、と。
親が、趣味や社会活動なんかで自分の人生を歩み始めると、子供は「やっと自分の人生歩み始めたな」とか思うそうです。
まあ、よくよく考えると、親が幸せでないと子供も幸せを感じられるはずはありませんね。うん、自分の人生歩もう!
登校拒否の子供の再登校を促したり、引きこもりの人を外に連れ出そうとする人のことを引き出し屋と読んだり、完全に今の学校制度を否定したり、読んでいて凄く楽しかったです。
図や絵が全くないので、正直、読んでいるうちに眠くなりましたが、登校拒否のお子さんや引きこもりのお子さんのことで悩んでいる保護者の方は絶対読むべきだと思います。「なんとか学校へ行かせなくちゃ」「なんとか世の中に送り出さなくちゃ」という危機感は無くなると思います。親の余裕は子供の余裕!!!
読んだ日:2019年3月上旬
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