人間を磨く 田坂 広志
副題:人間関係が好転する「こころの技法」
本書は9章構成でできています。
(第X章 XXXXXXXXXXXX というような区分けはされていないため、下記のように示します)
1. 人間関係が好転する「こころの技法」
2. 第一の「こころの技法」
3. 第二の「こころの技法」
4. 第三の「こころの技法」
5. 第四の「こころの技法」
6. 第五の「こころの技法」
7. 第六の「こころの技法」
8. 第七の「こころの技法」
9. 「人間を磨く」ことの真の意味
最近、仕事上の人間関係で少し疲れていたためか、ふと目に止まりました。
とても攻撃してくる人がいます。
おそらく、自分は「攻撃している」という自覚はしていないと思います。
「じゃあ、やめて、って言えばいいのではないか?」というアドバイスが意味のないことは、明らかでしょう。
それで、この人を何とかやり過ごす、自分のストレスをかけずに対応する術、あるいはヒントがないかと読んでみました。
「嫌いな人とはこういう心で付き合えば良い」「他人から好かれる人はこのような心である」というようなことが、丁寧に説明されていました。
ためになった部分も多かったです。前述の、攻撃してくる人に対しても、接し方のヒントをもらった気がします。
詳細は本書を参考にしていただきたいと思いますが、著者が述べる「七つのこころの技法」を簡単にご紹介します。
第一の「こころの技法」 心の中で自分の非を認める
非を改める、のではなく、『認める』ことが大事。
人間関係においては、言葉以外のメッセージが言葉以上に多くのことを伝える。
よって、心の中で自分の非を認めるだけで相手に伝わり、人間関係が好転する。
言葉以外のメッセージ > 言葉
これ、よくわかります。
うわべだけで「申し訳ありませんでした」って言っても、大体態度や雰囲気から、アイツ絶対悪いと思っていないな、ということを感じる時がありますもんね。
「こころから」認める、というのが大事です。
第二の「こころの技法」 自分から声をかけ、目を合わせる
誰かと人間関係でぶつかったとき、「後味の悪さ」を感じませんか?
それは、深層意識では、自分に対する嫌悪感、すなわち「自己嫌悪」と、相手に対する不安感、すなわち「他者不安」が動いていることが理由だそうです。
自分から声をかける、目を合わせる、というのは自分と相手の自己嫌悪と他者不安を解消し、つながりを深化させることにつながるそうです。
言い争った後などは自分から声をかけづらいですが、頑張って「おう!」くらいは言ってみるべきですね。
第三の「こころの技法」 心の中の「小さなエゴ」を見つめる
小さなエゴ、とは、「自分は悪くない!」「自分はこのままでいいんだ!」という感情であり、これが自分の非を認められないことにつながる。
一方、大きなエゴ、とは、「いまの自分を変え、さらに成長したい!」という思い。
大きなエゴに従って行動する人からは「謙虚さ」が伝わってきます。
小さなエゴに従って行動する人からは「傲慢さ」が伝わってきます。
どちらが人間関係に良い影響を与えるか、明らかですね。
第四の「こころの技法」 その相手を好きになろうと思う
人の「好き嫌い」は、実は変えがたい感情的なものではなく、努力次第で変えられる「意志の問題」だそうです。
嫌いな人間を見つめるための視点があげられていました。
・本来『欠点』は存在せず、『個性』だけが存在する
・嫌いな人は実は自分に似ている
・共感とは、相手の姿が自分の姿に思えること
などなど。
私は、欠点ではなく個性、という点が印象的でした。
全ては「個性」と思えれば、嫌いな人も、好き、とまではいかなくとも、理解できるようになりそうです。
第五の「こころの技法」 言葉の怖さを知り、言葉の力を活かす
人間には、心が動くと身(身体的行為)が動くという性質と、身が動くと心が動くという性質が備わっているそうです。
すなわち、相手のことを「嫌いだ」と言っていると、その感情が増幅されます。
心の中で相手をほめてください。
それだけで嫌悪感がなくなっていきます。
では、私も・・・
XXさんは仕事が速い。言いたいことを言える、素晴らしい人間だ。むにゃむにゃ・・・。
第六の「こころの技法」 別れても心の関係を絶たない
別れてもたまには会う、とか、LINEだけは続ける、というような話ではありません。
「和解」の余地を残せるしなやかな心を持ちなさい、ということです。
『人貧乏』という言葉があるそうです。
なぜかその人の周りから人が離れていく・・・
そうならないための大切な心構えとして、「関係を絶たぬこと」「和解の余地を残すこと」を意識しなさい、ということです。
第七の「こころの技法」 その出会いの意味を深く考える
人生においては、何か意味があって人と出会い、問題が起こるのです。
「なぜこの人と出会ったのだろうか?」と問いかけることにより、『人生の解釈力』をつけ、人、問題と正対しましょう。
そうすると、おのずと不幸な出会い(嫌いな人との出会い)にも意味を見いだせるでしょう。
意味を見いだせれば、問題は解決したようなものですね。
全体的に、私にはレベルが高い話だったと思います。
田坂氏の記事は雑誌PRESIDENTでよく読んでいますが、著書を読んだのは初めてでした。
一つだけ好きになれなかったのは、ところどころで「・・・・と疑問を持つ読者がいるだろう」という流れで話をつなげていたところです。
私は一つも疑問を持ちませんでした。
「では、・・・の場合はどうすればよいのか」等、普通に話を続けてほしかったです。
単なる好みの問題ですが。
読んだ期間:2016年6月27日~2016年6月28日